2018 . 12 . 16

~”#きょうだい展2019”開催企画~元心理のプロでもボロボロでした。

先天性の難病“結節性硬化症”であり、知的障害も合併している長女と二女・三女の母、埼玉県飯能市を拠点とする“ニモカカクラブ〜病気のこどもと家族(親・きょうだい)の会”の代表、元心理士、写真家というさまざまな顏をもつ和田芽衣さん。来年2019年2月に開催される世界希少・難治性疾患の日 in 飯能(RDD in飯能)のイベントのひとつ、現在募集中の写真展“#きょうだい展2019”(Sibkoto協力)に向けて、難病の長女をもつ母としての思い、きょうだい児への思いをインタビューしました。

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和田 芽衣 さん  (ニモカカクラブ代表・写真家)

1983年生まれ。北里大学大学院で医療心理学の修士課程を修了後、大学病院でがん専門の心理士として患者や家族、遺族のケアに4年間従事。当時は小児がんを担当することが多かった。2015年にニモカカクラブ~病気のこどもと家族(親・きょうだい)の会を立ち上げる。2016年に娘と自身の心情を記録した『娘(病)とともに生きていく』が第12回名取洋之助写真賞奨励賞を受賞。2018年6月には写真集『わたしと娘』を出版。現在は写真事務所を運営しながら、団体活動を並行して行なっている。

元心理士で親だから、親だけど~写真展”#きょうだい展2019”~


 先天性の難病“結節性硬化症”であり、知的障害も合併している長女ときょうだいである二女・三女の母、埼玉県飯能市を拠点とする”ニモカカクラブ~病気のこどもと家族(親・きょうだい)の会”の代表、写真家というさまざまな顏をもつ和田芽衣さん。
 来年2019年2月に埼玉県飯能市で開催される世界希少・難治性疾患の日 in 飯能(RDD in飯能)のイベントのひとつ、現在募集中の写真展“#きょうだい展2019”(Sibkoto協力、応募要項はインタビューの末尾に)に向けて、和田さんの難病の長女をもつ母としての思い、きょうだい児への思いインタビューしました。

長女の発病と夢だった仕事を退職


 私は3児の母で、先天性の難病“結節性硬化症”で知的障害がある長女(7歳)、きょうだい児の二女(5歳)、三女(2歳)がいます。長女出産前は大学病院で心理士としてがんで入院中の子どもたちと家族の心のケアに当たっていました。育休も終わりに近づき職場復帰の準備をしていた矢先、長女が9カ月の時に、6000人~1万人に1人の現代の医学では治すことができない難病だとわかりました。夢だった職に就き、仕事大好き人間だったのですが、娘の治療のために志半ばで辞職を決意、仕事をしていた時とは反対の立場になったのです。
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 主治医からは病気や治療に関して『今出来ていることができなくなるかもしれない。歩けていた子が歩けなくなったり、笑っていた子が笑えなくなったりすることがあります』と説明を受けました。『何て残酷な病気だろう』と思いました。また、元々どんなことについても“最悪の事態”を想定して行動する性格だったものですから、当時は娘が幼くして亡くなることも想像していました。
 来年はおろか、来月のこと、いや来週の娘の状態も五里霧中。まさに“どん底”・・・。不安を超えた恐怖、何一つ希望を持つことができない絶望の毎日でした。どんなに頑張ってもつぶれる時はつぶれるというか、友人や家族からのどんな優しい言葉も響かず、同じような苦境を経験している人の言葉にしか耳を傾けることができませんでした。

母の死も重なり


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 実は、長女の病気が判明する3ヶ月前に、実母をがんで亡くしました。身体疾患の患者や家族のメンタルヘルスは私の専門中の専門でしたし、つまらぬプライドがあったのでしょう…『私は大丈夫』と自分にも周囲にも言っていました。気を張るしかない日々でした。私の悪いところも十分に理解してくれている母がもし生きていれば、泣きたい時も弱音を吐きたい時も、黙って慰めてくれたはずなのに、『なんで今…一番居て欲しい時に居てくれないの』と毎晩病室で泣いていました。私は娘の母ですが、私自身娘として大人に甘えたかったんです。今だに、時々疲れ果てた時には母が恋しくなります。家族への甘えですね。
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 2011年2月末に娘が誕生、退院数日後に東日本大震災が発生、母の在宅介護と看取り、長女の発病、そして夢だった仕事を退職…これらを1年間の間に経験しました。サンドバック状態ですよ!落ち込むのは当たり前だし、そこから回復するには年単位で時間がかかるものと想定はしていました。元心理のプロですからね!見立てだけはご立派でした。ボロボロぐちゃぐちゃな精神状態。未熟な親。悲しみや苛立ちを物心つかない娘の前で隠すことなくさらけ出していました。娘の病もさることながら、自分自身の器の小ささを思い知る日々で、その事実が堪えましたね。

写真を撮るという行為


 『今日できていたことが明日できなくなるかもしれない』という現実は、恐怖でした。それまでスマホ写真で適当に撮っていましたが、一眼レフに持ち替え、レンズも新調したのは『目の前のものが明日には失われるかもしれない』という恐怖感と焦燥感からです。結果、5年間で5万枚、シーンにすれば2万シーンの写真を撮っていました。
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 私がカメラを向けるのは、良くも悪くも心が動いた時です。目の前の現実に対して、私の心に起きる反応。泣く娘を見て悲しくなったり苦しくなった時、カメラを構えて『さてこれをどう撮ろう』と考えるわけです。我が子が泣いているのにですよ?抱く前に写真を撮るんです。酷い親と思う人もいるでしょう。でも、ワンクッション置くことでほんの少し冷静になれたんです。結果的に、私にとって写真を撮るという行為は、受け止め難い現実から少し距離を置く手段となっていました。
 また、ありのままを記録することが自分自身や誰かのためになるだろうと思い、ブログや日記も書いてみました。でも、私には言葉で記録を残すことが向いていませんでした。特にブログは、『誰かが読むんだ』ということを意識してしまい、妙に美化したり、説教じみた書き方になってしまってダメでした。写真には言葉が要りません。私は写真を見返すと、当時の自分の言葉にならない感情をありありと思い出すことができました。私には合っていたんですね。



”ニモカカクラブ”~病気のこどもと家族(親・きょうだい)の会を立ち上げ


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 どん底だった私が一番ほしかったのは、“難病あるある”のような愚痴を言い合える同世代のお母さん仲間でした。当時は多くを乗り越えた笑顔の先輩お母さんの存在が私には少し遠すぎました。アドバイスではなく、悩みも含めて一緒に育っていく同期と出会いたかったのですね。かといって、健康なお子さんを育てるお母さんたちの多くは病気の話などをするとどう言葉を返したものか悩まれてしまうのです。仕方ありません。誰が悪いということでもありません。でも、『病気であっても同じ子育て。苦しみも喜びも共有できる仲間と出会いたい。ブラックな愚痴も含めて気軽に話せる仲間に出会いたい』と思っていました。
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 それが“ニモカカクラブ”病気のこどもとその家族(親・きょうだい)の交流の場を地元の埼玉県飯能市を拠点に立ち上げた理由です。ドイツでは苦労や不安“にもかかわらず”笑う人のことを“ユーモアのある人”と呼ぶそうです。病気や障害と向き合うことは楽ではありません。もちろん喜びもありますが、苦しみや悲しみもまた大切な一部です。『苦労は確かにあるけれど、それでも笑っていられる人に…いつかなれたらいいな!』という願いを込めニモカカクラブと名付けました。

 ただ、当初は共感を求めていましたが、娘が成長して地域での支援が必要になってきたのに伴い、今は具体的なノウハウや課題解決、行政への働きかけにも力を注いでいます。全国には素晴らしい団体がいくつもあります。ですが、私と娘が暮らすこの街に理解や制度など受け皿がなければ実生活で助けにならない。自分たちの暮らす街を育てていくのは、親である自分たちの責務と感じています。発信するたびに確実に応えてくださる街の方々の反応に手応えを感じ、大変励まされています。

世界希少・難治性疾患の日のイベントを飯能でも開催


 飯能市は人口8万人の小さな市ですが、クオリティは高くありたいですね。病弱児や家族にとって、物理的距離は重要な要素です。都心はバリアブルですし、感染リスクも高い、そもそも近くなければ足を運ぶのも大変です。病気や障害への理解がよその地で広がったとしても、暮らす街で広がらなければ孤独です。
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 たとえ小さな街でも世界イベントをやる意味は必ずあると信じ、2015年から世界希少・難治性疾患の日のイベントを飯能でも開催するようになりました。RDD in 飯能では2年前から“きょうだい”もテーマとして毎年扱うようにしています。第3回、第4回は2年連続で、病児のきょうだい支援で有名なNPO法人しぶたねさんに講演していただいて大好評でした。そして、来年2019年2月の第5回はニモカカ×Sibkotoの企画で準備中です!

写真展”#きょうだい展2019”募集中


 現在募集中の写真展“#きょうだい展2019”(Sibkoto協力企画)では、きょうだい児、大人になったきょうだいをテーマにした写真を広く募集しています。親としてはどの子もみんな大事と思ってはいますが、“きょうだい児”、“きょうだい”というワードを知らない大人(保護者をはじめとして、きょうだいの身近にいる大人たち)もまだ多いです。この写真展をきっかけに、まずはほんの僅かな時間からで良い…きょうだいのことを考えてもらえる機会になればいいなと思っています。今回の“#きょうだい展2019”どのような写真や思いと出会えるのか、とても楽しみです。

 2019年1月30日までに応募いただいたものからニモカカクラブおよびSibkotoスタッフが20作品を選び、2月9日から17日まで会場に展示します(去年は460人の方が来場されました)。展示以外のそれ以外の応募写真もインスタグラム#きょうだい展2019でご覧いただけます。親御さん、きょうだい児、大人になったきょうだい、どなたが撮った写真でも、人物だけでなく風景なども歓迎です。

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(”#きょうだい展2019”より。和田芽衣さん提供。)





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(”#きょうだい展2019”より。大人になったきょうだいが撮った写真例。)




★募集要項・現在応募いただいている写真はこちら(インスタグラム#きょうだい展2019)からご覧いただけます。
https://www.instagram.com/explore/tags/%E3%81%8D%E3%82%87%E3%81%86%E3%81%A0%E3%81%84%E5%B1%952019/?hl=ja

きょうだい児への親の勝手な願い


 第5回RDD in飯能のテーマは「きょうも、あしたも、あさっても?家族だから、家族だけど」
 家族って難しいですよね。一番力になってくれる存在だけれども、傷つけ合うのも家族・・・。我が家では、既に他界していたり高齢・遠方であるなど祖父母などの手助けは得られません。夫婦2人だけでは破綻します。地域に助けてもらう他生き残る術はありません。放課後デイサービスなどの福祉サービスが新しく生まれ拡大しているおかげで、下2人との時間が作れている状況もあります。ありがたいことです。
 でも、きっとこの先、きょうだい2人には親にも言えない悩みも出てくるのでしょうね。例えどんなに気をつけていたとしてもです。その時は親の悪口を言える仲間が家の中にいたり、ニモカカクラブに来てくれている同じきょうだい児たちが地域で親抜きで会えればいいなと。親の勝手な願いです。Sibkotoさんにお世話になることもあるかと思います。とにかくこどもたちには3人とも、自分の人生を謳歌してもらいたいと心から思っています。

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(”#きょうだい展2019”より。和田芽衣さん提供。)




ぜひ世界希少・難治性疾患の日 in 飯能(RDD2019in飯能)へ


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 『#きょうだい展2019』(Sibkoto協力企画)はプレイベントとして来年2019年2月9日から当日の17日まで展示予定です。また、2月17日当日のオープニングトークは『きょうだい児』(藤木和子・Sibkoto運営者、インタビュアー和田芽衣・ニモカカクラブ代表)、特別講演は『親・子・きょうだい・パートナーが病気になる時(仮)』をテーマに、石渡未来(横浜市立市民病院 看護師 家族支援専門看護師)、野々山敦夫(日本福祉大学 看護学部 看護学科 助教)をお呼びしています。なお、2月17日は当日ボランティアも若干名募集しています。
 
 第5回世界希少・難治性疾患の日 in 飯能「きょうも、あしたも、あさっても?家族だから、家族だけど」、ぜひ飯能に遊びにいらしてください!“#きょうだい展2019”の写真もお待ちしています!

★特別講演・ボランティアの申込はニモカカクラブHPまで
https://nimokakaclub.com

★和田芽衣さんの出版物はこちら
写真集『わたしと娘(ゆき)』慧眼株式会社
https://amzn.to/2QUArmB
『PTG 心的外傷後成長: トラウマを超えて 』近藤卓編著, 金子書房
https://amzn.to/2BlQjVt
『基本的自尊感情を育てるいのちの教育: 共有体験を軸にした理論と実践 』近藤卓編著, 金子書房
https://amzn.to/2BnoH22

Sibkoto編集部より
Sibkotoではきょうだい、きょうだい児についての体験談を募集しています。体験談はタイトル、中見出しを含めて2000文字以上の文章とさせていただきます。内容は問いません。親御さんの立場からのきょうだい児、きょうだいとの体験談についてもお待ちしております。体験談掲載希望の旨、お問い合わせページ( https://sibkoto.org/contact )よりご連絡ください。

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