2019 . 01 . 01

きょうだいの私結婚どうする?参加レポート~きょうだいの結婚へのハードルは、案外高くないかもしれない~

 きょうだい児が成長して最も悩むことの1つが、結婚。きょうだいが集まると、必ず話題になる「鉄板ネタ」です。その本音をみんなで考えてみようと、昨年2018年11月10日に行われたのが「きょうだいの私、結婚どうする?~リアルに語る結婚観~」(障がい者のきょうだいの会ファーストペンギン主催)。Sibkoto運営者の持田と藤木が登壇。参加者の磯脇洋平さんによるレポートです。


きょうだい自身が、ハードルを上げちゃっている?



山下 聞いていて思ったのが、恋愛に限らずですが、カミングアウトって早くした方が、人間関係が円滑にいくような気がするかなって思うんですけど、どうですか?

藤木 私は、友達段階とか自己紹介とかで、早く言っちゃった方がいいと思います。でも、付き合っている途中でカミングアウトして結婚した、っていう体験談もたくさん聞きます。

持田 私の場合は、兄に障害があることを気にし過ぎてしまっていたように思います。友達関係でも恋愛でも結婚でも、もしかしたら相手から受け入れてもらえないかもしれないとか、もしかしたら「重たい」と言われてしまうかもしれないとか、自分で悪い方悪い方に考えて過ぎてしまっていて。
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 でも実際に話すと、「あ、そうなんだ」とか、すごく普通に素直に受け入れてもらえたこともありました。もちろんその逆も確かにあったんですけども……。でも、いろんな場面で、自分は悪い方向に考え過ぎていた、と思いますね。

山下 確かにきょうだいって、自分たちが「特別な存在」って思ってしまっていて、相手との壁を、向こうが作っているというより、こっちが作っちゃっている、っていうところがありますよね。人間関係のハードルを、こっちが上げちゃっているんですよね。

持田 意外とハードルは低くて、ポンって飛んで向こう側に行けるのに、自分で「ハードルが高い」とか「壁が厚い」とか思い込んでいる、っていうところがありますよね。
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山下 そうそう、わかります。それはありますよね。

太田 持田さんのおっしゃる通り、きょうだいはいろんな場面で悪い方に考え過ぎているんだと思います。お付き合いした方から弟について嫌なことを言われたことは、一度もないですし。
 「ハードルが高い」と思っているきょうだいも多いと思うんですが、考えているほど気にしなくてもいいのかもしれません。思い切って、実は意外と低いハードルを飛ぼうとしてもいいと思います。ただ、幼い頃に、友達にからかわれたりしたことをずっと引きずってしまって、ハードルを高くしてしまっている面はありますよね……。

藤木 私の場合は、きょうだいの自分を受け入れてくれる人と付き合った方がいい、結婚した方がいい、と思うようになっていたんで、ハードルを飛ばないでくぐった(笑)、っていう感じですかね。

結婚の決断は、自分と本気で向き合う機会



山下 結婚してから、考え方とか変わりましたか?

持田 一番は苗字が変わって、自分に対する見方が変わりました。旧姓のときには、「家族のケアをしている私」という部分がどうしてもあったんですが、結婚して「持田」という苗字になった瞬間に、「あ、ここから自分の人生が始まる!」って強く思いました。

藤木 実は「藤木」は旧姓なんです。仕事やきょうだいとしての自分は「藤木」なんですが、私も別の苗字に変わって、新しい自分になったようでうれしかったです。
 結婚するまでの「結婚したい」、「東大に入りたい」、「弁護士になりたい」って願望は、ある意味、世間から「合格って言われたい」、「認められたい」、「ブランドがほしい」って気持ちで、社会のものさしで生きていたと思います。
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 でも結婚してからは、自由に、自分のものさしで生きたいな、って思うようになれたんです。結婚のイベントで言うのもなんですが、「結婚いいよ、幸せ、ハッピーだよ」みたいなことを言いたいんじゃなくって。やっぱり、社会のものさしじゃなくて、自分のものさしで、自分が求める幸せを貪欲に追い求めていくのが、いいんじゃないかなって思います。
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山下 苗字が変わって考え方が変わったっていう女性2人に対して、男性の太田さんは苗字は変わっていないですよね?その場合はどうですか?

太田 そうですね、私の場合は子どもが幼稚園に通うようになったとき、子どもの名札を見て、結婚したことを強く実感しました。
 あと、結婚に向かうときの話になるんですが、男性がやっぱり勇気を出して、女性にアプローチというか、エスコートをしてほしいって思うんですね。私も、プロポーズするとき、ものすごく勇気が必要だったんです。福岡の繁華街の天神に婚約指輪を買いに行って、店を2周ぐらいしましたからね(笑)。買うか買わないか、フラれたら質屋に出そうか、なんて考えていたんです(笑)。
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 けれど、女性からなかなか「結婚しよう」とは言えないと思うんで、きょうだいっていうこともありますけど、結婚を考えている男性には、一生分の勇気を振り絞ってチャレンジしていただけたらって思います。
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藤木 九州男児ですね(笑)。ちなみに、うちの場合は、私の方が積極的でした(笑)。

持田 もう1つ結婚して思ったことがあるんですけど、きょうだいには、家族のことを自分で責任を持って判断しなきゃいけない、っていう特徴があると思うんです。その中で、第三者の目線でいろんなことを言ってもらえたことで、気づかされたことが私は多かったです。
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 「ケアしすぎているよ」とか「気にし過ぎだよ」とか「そこまでやらなくてもいいんじゃない」とか、旦那さんから言ってもらうと、納得できたり行動が変わったりして、自分の固まっていた考え方が少しずつゆるんでいきました。なので、旦那さんは、とても心強い存在です。
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太田 妻が結婚するときに、親友から「どうなの?」って心配されたみたいなんです。ただ、妻は、「障害のある弟のことも含めて、私の家族のことが好きだ、嫁いでもいい」って言ってくれたみたいです。やっぱり、相手のことを好きかどうかが、一番大事ですよね。
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気づいたら、ずっと笑ってたんですけど(笑)


 イベント会場に向かう電車では、「真面目な感じで、真面目に話し合う」様子を見て、帰りの電車の中で1人、何とも重たい気持ちになって、家に帰ってぐったりするんだろう、と思っていました。
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 ですが、ぶっちゃけ話が、次々に出るわ出るわという展開! 「きょうだいの結婚」という深刻に思われがちなテーマだからこそ、あえて笑いも入れつつ、ポイントは丁寧に話すという、Eテレの「バリバラ」のような空気感! さすがにここに書くのをためらうような、生々しい過去の恋愛トークまで飛び出し、会場はずっと笑いに溢れていました。

 学生さんから年配の方まで、きょうだいだけでなく、親子一緒の人やカップルなど100人以上が参加した今回のイベント。 参加者の背中をそっと支えてくれるようなメッセージを散りばめてくれた登壇者と司会者の4人。グループディスカッションや質疑応答でのやりとり。

 「恋愛に臆病になっていた」とズバッと言われてしまった37歳独身男は、まずは「心のハードル」を取り除いて、「自分のものさし」で生きようと誓いながら、「○○さんをご飯に誘ってみようかな」と1人妄想するのでした。

NHKニュース 「わたしと結婚してくれますか?」(2019年1月18 日)でもイベントを取り上げていただきました!

※登壇者の個人インタビューは末尾の登壇者紹介にリンクがありますので、良かったらぜひご覧ください。

【次回】「親ときょうだいが本音で語る未来と親なきあと」


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 次回のイベント「親ときょうだいが本音で語る未来と親なきあと」(ファーストペンギン主催)の開催が2019年3月24日に決定しました。
 申込・詳細はこちらをご覧ください。
https://fastpengun20190324.peatix.com/

※追記
TBSラジオ障がい者の「きょうだい」の悩みとは?
TBSラジオで親御さんの立場ときょうだいの立場の声を取り上げていただきました。

司会・登壇者/主催・共催・協力


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山下のぞみ(やました・のぞみ)
障がい者のきょうだいの会ファーストペンギン代表、社会福祉士
障害者支援施設に勤務する傍ら、20代・30代を中心とするきょうだいが集まる場として、2015年にファーストペンギンを設立。これまでに100人以上が参加。7歳上のアルコール依存症と精神障害の兄、4歳上の知的障害の姉を持つ。


太田信介(おおた・しんすけ)
絵届け問屋「kousuke」代表、福岡きょうだい会副会長
2012年に15年間勤務した会社を退職して起業。7歳下の中度の知的障害と自閉症の弟で画家の太田宏介の作品を中心とした、絵画展企画・絵画レンタル・デザイン提供などの事業を福岡県を中心に展開。


藤木和子(ふじき・かずこ)
障がい者のきょうだいの会ファーストペンギン事務局、法律事務所シブリング 代表弁護士

2012年弁護士登録。2018年8月に独立。事務所名の「シブリング」は、英語で兄弟姉妹を意味する。聴覚障害と手話、家族関係を専門として活動。全国各地で授業、研修・講演活動を行う。全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会、障害者のきょうだいのためのサイト「Sibkoto」などの運営にも携わる。聴覚障害があるきょうだいをもつSODAソーダの会代表。3歳下に聴覚障害の弟を持つ。


持田恭子(もちだ・きょうこ)
ケアラーアクションネットワーク代表

1996年にダウン症児者の兄弟姉妹ネットワークを開設した、きょうだい支援のパイオニア。自分より家族のケアを優先している親やきょうだいを支える団体として、2013年にケアラーアクションネットワークを設立。これまでに450人以上が参加。ヤングケアラー研究会、障害者のきょうだいのためのサイト「Sibkoto」の運営にも携わる。2018年12月にEテレの「バリバラ」で「“きょうだい”の悩み」が放送された際、きょうだい支援の専門家として出演。研修・講演活動も行っている。2歳上に中度の知的障害とダウン症の兄を持つ。


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主催:
障害者のきょうだいの会ファーストペンギン

共催:
ケアラーアクションネットワーク
福岡きょうだいの会
聴覚障害のきょうだいをもつSODAソーダの会

協力:
ぜんち共済株式会社
全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会
Sibkoto障害者のきょうだいのためのサイト

【Sibkoto編集部より】
 Sibkotoでは、きょうだい、きょうだい児についての体験談を募集しています(匿名での掲載可)。親御さんや支援者等の立場の方も歓迎しております。体験談はタイトル、中見出しを含めて2000文字以上の文章とさせていただきます。内容は問いません。体験談掲載希望の旨、お問い合わせページ よりご連絡ください。



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