2020 . 11 . 06

支援が必要な子どもと家族に関する情報サイトCOMUGICO運営者の体験や思い[転載]

支援が必要な子どもと家族に関する情報サイトCOMUGICO運営者の小川琢也さん。公開シンポジウム「子どもの親になること ダウン症のある子どもの父親から~子育てに関するメッセージ~」(ブログ「Rioの記録 愛娘の成長記録(特別養子縁組)」より)、「感謝!!COMUGICO公開から1年」から転載させていただきました。

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小川琢也 さん  (COMUGICO運営者)

COMUGICOは支援が必要な子どもとその家族が情報を一元的に参照できる情報サイトです。習い事・お教室、サークル・親の会、医療機関、療育・通所施設、サービス、補装具・設備、イベント活動、家族/きょうだい児向け支援などが検索できます。きょうだい児のカテゴリには10を超える団体が掲載されています。

麦のこと


私達夫婦は3年前に息子の麦を授かりました。
麦は妻のお腹にいる時にエコー検査でNTが大きく染色体異常の可能性があると判り、その後の羊水検査で21トリソミーと診断が出ました。
私達夫婦の場合は、染色体異常を告知された時、よく聞くような絶望感とかは一切無く、中絶の選択肢は全くありませんでした。
検査は育てていく準備を整えるためでした。

麦は頑張って生まれてくれました。
生まれてすぐに鎖肛の手術しました。ほかにも様々な合併症があり、医師からも覚悟するように言われました。 当初は1カ月目の月誕生日は迎えられないとも言われました。

妻は毎日一日23時間の面会可能時間のほとんどをベッドサイドで過ごしていました。
母体を心配するナースや心理士さんが休むように勧めても、ベッドサイドからテコでも動かない妻を見て母性の凄さをまざまざと感じました。
日に日にヤツレて行く母親を案じたのかもしれません。 麦は医師も驚くほど頑張ってくれましたが、3カ月で神様の所へ帰ってしまいました。

亡くなってしまった麦を自宅に連れて帰り、親子水入らずで数日すごしました。保冷剤と氷の中、愛しい息子と川の字で過ごした日々は幸せな時間でした。

麦をきっかけに知ったこと


麦がお腹の中にいる時から様々な媒体でダウン症の事、取り巻く環境について情報収集しました。
受け入れられない親達の苦悩。養護施設や乳児院における人員不足の状況。ネット掲示板での酷い書き込みや容姿に対しての侮辱、ネガティブな情報をたくさん目にしました。
また、出生前診断で染色体異常を告知された夫婦の97パーセントが中絶するというデータに愕然としました。

望まれなかった子がこんなにいるなんて!
私達の待ち望んだ我が子はNICUで母親に抱かれることも口からミルクを飲むこと、泣くことすら許されず亡くなっていったのにです。

麦を亡くして抜け殻のようになった我々夫婦は、麦のために揃えた物や、病院への往復に利用したバスを見ることさえ辛く、幸せだった妊娠期間を過ごし、そこからドン底の闇への転落を経験した町から引っ越すことにしました。

抜け殻に残されたのは溢れる母性と父性、障害を持って生まれた子供が「望まれない子」として世の中に沢山いるという情報です。
天国へ旅立ってしまったわが子がいなければ知りえなかったこれらの事実は、わが子からのメッセージに思えてなりませんでした。

事故や虐待で小さな子供が亡くなるニュースを見ては涙を流し、小さな子供を連れた幸せそうな家族を見かけると目を逸らし、時には道を迂回することさえありました。
そんな夫婦がダウン症児を養子に迎えることを考えるのに時間はかかりませんでした。

特別養子縁組のこと


色々な団体、個人とコンタクトを取りました。私達はどうしてもダウン症の赤ちゃんを育てたかったのです。
息子が残してくれた障害児に対する無条件の愛情みたいなものでしょうか。

そんな中、妻が「命をつなぐゆりかご」へ電話しました。
養子縁組は子供の為にあるもので養父母の為にではない事。子供の性別、年齢、肌や髪の色、人種、出生の理由等、いかなる選択の余地も養父母希望者にはない事。 沢山の養子縁組を希望する親がいる事。説明会に参加して、養子縁組の主旨を理解する事。面談によって不適と判断する場合がある事。自宅の環境を確認して不適と判断する場合がある事。もう2年3年待っている方々もいる事等を伺いました。

最後にダメ元でこちらの希望を伝えました。
「ダウン症の赤ちゃんを育てたいのです」
「親の希望で子供を選ぶことは出来ないんですよ」
「そうですよね・・・」

電話を切った後、2,3年か・・長いなぁ、しかも出生率の低さを考えると、ダウン症の子供を育てる事は難しいな、と思ったその時、妻の電話がなりました。命をつなぐゆりかごの代表からの折り返しでした。
直近の説明会に参加することを求められ、養子縁組を望む理由についての作文を書くように言われました。説明会ではダウン症の子を養子にしている先輩家族とも会えました。
代表夫婦が埼玉からわざわざ私達の自宅に面談に来てくれ、あれよあれよという間に我が家にリオを迎えることになりました。

特別養子縁組の場合、申請してから1年間、実親としての適性を児童相談所と家庭裁判所が観察する期間があります。
その間は実親に親権があり、実親の苗字と実親の付けた名前で公的機関や病院で呼ばれたり、書類の処理を行います。とてもステキな名前でしたが、この期間に実親の気が変わってリオを取り返しに来たらどうしようと当時の私達はとても不安でした。
当初は障害を理由に養子に出す実親に複雑な感情を持っていましたが、今は「リオを産んでくれてありがとうございます!」と心から感謝しています。

リオのこと


リオを迎えたのは麦をなくして3カ月後です。
リオが生後約4カ月の時です。リオは岡山で生まれ、NICU、乳児院から最初の養子縁組希望者の家、埼玉の代表の自宅と日本のあちこちを代表の奥様と旅していました。妻が「命をつなぐゆりかご」にコンタクトしたのは正にこのタイミングでした。

代表の自宅でリオと対面した時は、訳の分からない感情が溢れてきました。喜び、興奮、感謝、、、麦が生まれてくれた瞬間の感動と似ていました。親にしてもらった瞬間に溢れてきた、幸せにしたい!という強い感情です。
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母性と父性のこと


私は麦が生まれた瞬間と、リオと対面した瞬間にこの父性と思われるエネルギーを感じました。
世の中の母親はこのエネルギーを妊娠中から感じているのでしょう。
そして生死をかけた出産という偉業を成し遂げるのでしょう。
でも、母性イコール妊娠、出産でないことも確かです。妊娠することができない女性でも、子供を愛し立派に育児している方が沢山います。
逆に出産しても子供を愛せなかった人もいるでしょう。
母性を一概にはくくれません。

世の男性は妊婦の苦労や出産の痛み苦しみを経験することなく、女性と子供の生死をかけた出産によって父親にしてもらえるのだと思います。
立会い出産を義務付ければ、父親の自覚が無い男性は激減すると思います。妻子に対してリスペクトがあればDVや虐待も減ると思います。
そもそも、どの男性も間違いなく母親という女性のお腹から生まれたのです。
女性に命掛けで産んでもらったのです。
男性はまず世の中の女性に感謝とリスペクトをするべきでしょう。

母性が自然発生的な本能に基づくものとすれば、父性は後天的な要素が強いものと思います。

育児のこと


私は子育てについて、経験の浅い未熟者です。
父親の役割は「給料を稼いでくること」と思っていました。
母親は日常の家事を行い家庭を運営していくものと思っていました。
一番身近な存在として自分の両親がいますが、私を含め4人の子を育てました。ベテランです。
とりあえず4人を育てた両親に子育てについて聞いてみた事があります。父親の答えは「次は上手くいきそうな気がする」でした。おいおい!
学校の教員である我が父さえこの有様です。

長男の私は正直問題児だったと思います。私の育児、教育でヘトヘトな両親を見ていたせいか、3人の妹達はとても優しい優等生になりました。
今はそれぞれ大分個性的な生活を送っていますが、私を含め皆、幸せに暮らしています。
上手くいかなかったと思っている子育ての結果です。

子育てに上手い下手など無いみたいです。
育児に成功も失敗もないと思います。
子供を何人東大に入れた!スポーツ選手はこうして育てた!子育て大成功!
なんてよく聞きますが、ちょっと首を傾げてしまいます。勉強ができたり、スポーツが上手な事が、すなわち親が上手に育てたという事や子供の幸せと直接的な因果関係にあるとは思えません。

我が父がいつ父性が目覚めたのか、いまだ目覚めてないのかはわかりません。立会い出産など無い時代です。

子育てに大事な事は惜しみなく愛情を注ぎ続けること、お互いに唯一無二の存在と感じ合う事に尽きると思います。 子育ての正解があるとすれば、子供に「私は愛され、必要とされている」と感じとってもらう事かなと思います。 また、子育ての正解がその子の幸せとイコールとするならば、幸せを感じとる力を養う手助けをしてあげることが、親にできる一つの大きな事と思っています。目の前の100円を見て「100円しかない」ではなく「100円もある」と感じる力です。
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