2020 . 06 . 21
KHJひきこもり兄弟姉妹の会 担当者の体験や思い【後編】
KHJひきこもり兄弟姉妹の会の担当者の一人であり、ひきこもりの経験がある深谷守貞(ふかやもりさだ)さん。深谷さんの体験や思い、KHJ全国ひきこもり家族会連合会、KHJひきこもり兄弟姉妹の会の活動についてインタビューしました。【後編】では、暴力的支援業者の問題や、きょうだいの方へのメッセージ等についてまとめました(担当:Sibkoto運営者 松本理沙)
ひきこもりとは「自ら人間関係を遮断せざるを得ない状態像」
ひきこもりというのは、とてもエネルギーを費やす行為です。傍から見れば、親のすねをかじって、いつまでも怠けていて、そういう心ない声もあります。しかしひきこもりとは怠けている訳でもサボっている訳でもない。
インタビューの冒頭でも申し上げましたが、ひきこもりとは「自ら人間関係を遮断せざるを得ないほど追い込まれた状態像」です。自ら人間関係を遮断せざるを得ないほど、傷つき、苦しんでいるのです。
言い換えれば「自ら自分自身を軟禁状態に追いやる状態像」と言ってもよいでしょう。もし部屋を一つ与えられて、ネットもつなぎ放題、三食も保証するし、好きな本とか漫画とかも全部買い与える。その代わりこの部屋から5年間一歩も出ないでください、誰とも会わないでくださいって言われたら、ほとんどの人が耐えられないと思います。一週間も持たないのではないでしょうか?
でも、ひきこもりの場合は5年でも10年でも20年でも部屋から出ないし、誰とも会わない。そんな、とても苦しい状態にありながら、それでも他者との交わりを遮断してしまう。それ程までに他者から傷つけられたり、他者との関わりに疲れ果ててしまっているんです。
もちろんその背景は様々です。不登校からそのままひきこもりになる方のイメージがありますが、最近では中高年のひきこもりが増えています。リストラや介護離職、派遣切り、そういうことがきっかけでひきこもりになってしまう。内閣府の調査では、15~64歳までのひきこもりは115万人と推計されていますが、そのうち61.3万人が40歳以上になります。この40歳以上にひきこもったきっかけを尋ねると、「退職」が最も多いという調査結果があります。
もちろん退職だけではなくて、背景に発達の特性や精神疾患を有している場合もあります。学生時代のいじめやLINE外し、大学での履修の失敗で人間関係が構築できなかった、就活の失敗、ブラック企業で疲れ果ててしまった、中にはヘッドハンティングされた先で上から押さえられ下から突き上げられ、心を病んでひきこもってしまった方もいます。ひきこもりに至るケースはとても多様です。しかし様々な傷つき体験を経て、そうやって他者との交わりや関係性を自ら遮断せざるを得ない程に追い込まれ、ひきこもってしまうのです。
ひきこもる生活の中で、本人の自己肯定感や自尊感情も損なわれていきます。ひきこもりの苦しみとは、自己肯定感や自尊感情が損なわれていく苦しみでもあるのです。
そしてひきこもりには365日休みがありません。自己肯定感や自尊感情が損なわれていく苦しみと闘う日々が続きます。そうやって自分を責めてしまうし、このままで良い訳がないことも十分に分かっている。しかし、それ以上に他者との関わりに傷つき、苦しんでいるので、どうしようもなくなってしまう。この悪循環の中で、次第に生きるエネルギーを費やしていきます。生きていくためのエネルギーを、ひきこもることに費やしていくのです。
そんな時に周囲から心ない声が浴びせられる。「いつまでこんなことをやってるんだ!」「このままで良いと思っているのか!」「おまえの人生なんだから、もう好きにしろ!」
家族や親族、周囲の心ない声、否定的な関わりの声が、本人をどんどん追い詰めていき、生きるエネルギーを周囲の声と闘ったり、自分を責めることで使い果たしてしまうのです。