2019 . 10 . 28
筑後市社会福祉協議会におけるきょうだい支援の取り組み
筑後市社会福協議会にてコミュニティワーカーとして勤務されながら、「ふくおか・筑後きょうだい会」の設立・運営に携わってこられた卜部善行(うらべよしゆき)さん。筑後市社会福祉協議会における取り組みや、きょうだい会の運営者としての思い等について、インタビューしました(担当:Sibkoto運営者 松本理沙)

卜部 善行 さん (筑後市社会福祉協議会)
広島県福山市出身。カープファン。2004年から福岡県の筑後市社会福協議会にてコミュニティワーカーとして勤務。担当業務は、小地域活動全般、当事者活動支援、生活困窮者支援、福祉教育、災害ボランティアセンター業務、調査活動など。地域に取り残されている「声なき声」に耳を傾け、できることはないかを考える。本人を支える方法がなければゼロからつくればよいがモットー。社協の仕事はクリエイティブだと考えている。
福祉分野に興味を持つきっかけ
ソーシャルワーカーになろうと思った理由は、おじいちゃんの認知症です。今でいう、若年性認知症だったと思うんですけど、徘徊をしょっちゅうしてました。周りの人たちは、皆仕事に行ったり、学校に行ったりしていて、僕が親族の中で、一番年齢が若い人だったので、行方不明になったおじいちゃんを探しに行くのが、毎日の日課でした。小学校の高学年ぐらいから、そんな感じだったと思います。そんな状態が、3,4年続いていて、最終的にはおじいちゃんが亡くなるわけですけど、その経験が、福祉分野に興味を持つきっかけにはなったかなと思います。
あと、実は僕自身が、被爆3世。母方のおじいちゃんが長崎で被爆してるんです。平和と福祉って関連があって、戦争中の社会だったら、障害者の人とかたぶん一番先に死んでいく人たちなんですよね。でも、例えば、重度障害の人がきちんと生きていけるということは、世の中が平和であるということの証なんだとある方が言っていて、そういう意味ではやっぱり、平和というものにも関心がすごくあった。自然と、福祉の仕事というところに繋がっていったのかなという感じがします。
筑後市社協での担当業務
一言で言うなら、地域福祉活動全般です。その地域福祉の分野の中に、エリアで区切るような「小地域福祉活動」というのがあります。小学校区、中学校区という小さい範囲で、いろんなことやりましょうっていうことです。エリア設定の地域福祉があれば、また一方で、テーマごとの設定もあるわけですよね。
それが、きょうだい会であったり、ひきこもり家族会だったり、介護者の会だったり、障害のある子の親の会だったり。そんなテーマ型の活動、特に家族支援が多いんですけど、そんなことをやってきました。あと、ここ4,5年位は、生活困窮者支援の一環として、ひきこもり支援にも取り組んでいて、家族支援っていう部分の家族会運営と併せて、本人支援のための居場所づくり、ということもやっております。
本人の居場所っていう時に、「ひきこもってるんだから、どうやって出てくるんだ」って話なんですけど、仕事を準備したんですよ。ここに来たら、とりあえず内職がありますよ、という。障害分野でいうB型事業所みたいなイメージです。でも別に障害手帳がいるわけでもないし、診断書がいるわけでもないんです。「誰でも来ていいよ」「ここに来たらとりあえず、仕事があるよ」っていう状況をつくったら、年間延べ500人ぐらい、当事者の方が来て下さることになって、そんなところで本人支援をやっております。
あとは、福祉教育。理解を広げていくための学習会だったり、啓発のための社協だよりを、毎月発行していったりとか。また、社会福祉士の実習指導もやっていたりとかもしています。
それと、災害ボランティアセンター業務。もし筑後市で災害が起きた場合は、社協が災害ボランティアセンターを立ち上げますので、それの担当者になっています。その準備のため、日頃から研修もやっています。
あとは、調査活動。最近は、一人暮らし高齢者実態調査ということで、市内の独居の方の全数調査をやっております。千何百人かいらっしゃるんですけど、その調査を今集計中だったりとか。また毎年の、校区ごとの人口統計等を集約した社会福祉基礎調査を集計し、地域を全体的にアセスメントしていく業務もやっております。
コミュニティワーカーの役割
担当は担当としてあるんですよね。「卜部、お前の仕事は〇〇だ」。で、それ言われたら、例えば、前任者から言われたことだけ事務的なことをやっとくだけでも、別にそれでもいいんですよ。それで、給料はもらえるはずなんです。でも、「社協の役割、コミュニティーワーカーの役割って何?」って言われた時に、やっぱり、与えられた仕事やっとくだけでは、だめなような気がしてるんですね。
僕らの役割は何かっていうと、地域に取り残されている当事者の声、声なき声に、耳を傾けることだと思うんですよ。そして、何かできることはないかを考えていくのが僕らの仕事だし、その声なき声を聞くために、どうすればいいかを考えることも、僕らの仕事だろうと思います。
それこそ10年前は、きょうだい支援なんて言葉は、筑後市にはなかったわけです。じゃあ、きょうだいの課題があることが分かった。でも、支援機関がない。「ああ、すみません諦めます」って、話にはならないわけなので。当事者を支える支援、方法がなければ、つくればいい。そういう思いでつくってきました。
きょうだい会も含め、ひきこもり支援、フードバンクもつくりましたし、いろいろゼロからつくっていった10年だったかなと思ってます。社協の仕事って、お役所っぽくて硬いイメージがあるんですけど、本当はすごいクリエイティブな仕事なんだよっていうことを、いろんな人に知ってもらいたいなと思いますね。
