2019 . 05 . 12
聞こえないきょうだいをもつSODAソーダの会を語る
ホンマルラジオ渋谷恵比寿局のケアラー支援専門チャンネル「なんてたってCAN!」。第5回は「聞こえないきょうだいをもつSODAソーダの会」代表の藤木 和子さんから、会を立ち上げたきっかけや参加されている方々の想いについて語っていただきました。

持田 恭子のなんてったってCAN! (ゲスト 藤木 和子 SODAの会代表)
2019年3月から始まったケアラー支援専門チャンネル「なんてたってCAN!」は、障害や病気のある人々を支える家族(ケアラー)の視点から、さまざまな社会問題について語るインターネットラジオ番組です。特に、幼少期から人生の大半を親や兄弟姉妹の介護やケアに費やしている人々や、彼らを支える人々を紹介しながら、何を解決するべきなのかについて分かりやすく解説しています。
ホンマルラジオ渋谷恵比寿局「なんてったってCAN!」
http://honmaru-radio.com/category/can/
聞こえないきょうだいをもつSODAソーダの会を語る
ラジオで放送されたお話の概要を「対話形式」でご紹介します。

パーソナリティのCAN代表 持田 恭子
持田 今回は「聞こえないきょうだいをもつSODAソーダの会」の代表をしている藤木和子さんをゲストにお迎えしています。
藤木 よろしくお願いします。
SODAって、ん?飲み物のソーダ?

SODAの会HPより
持田 SODAの会と聞いて、ん?ソーダってなんだろうって思った方もいらっしゃるかもしれませんが、藤木さん、SODA(ソーダ)って何なのかって、ちょっと簡単に教えてもらえますか?
藤木 SODA(ソーダ) とは「聞こえない兄弟姉妹をもつ聞こえる人」のことなんです。英語でいうと「Sibling Of DeAf(シブリング・オブ・デフ)」。シブリングが「きょうだい(きょうだい児)」、デフが「耳が聞こえない・聞こえにくい・ろう・難聴・聴覚障害」という意味ですね。その頭文字をとってSODAっていうんです。飲み物のソーダみたいって、子どもたちが喜ぶんですよ。
持田 いいですよね。分かりやすいし、憶えやすい。
藤木 一応、アメリカでそういう言葉はあるんですが、聞こえない世界でもめっちゃマイナーな言葉で・・・。
持田 SODAって日本ではあまり聞かないですよね。
藤木 聞こえない世界の人でも、ほぼ全員が何?初めて知った!とまだぜんぜん知られていません(笑)
持田 ソーダっていうといろんな色がありますよね、SODAの会もいろんな色があるっていうイメージなんですけど・・・
藤木 サイダーとか、コーラとか、ファンタとか、いろんな色がありますよね。私たちも個性やその日によってもいろんな色になるよね、というコンセプトでSODAの会を運営しているんです。
同じ立場の人と会ってみたい、から始まる
持田 藤木さんがSODAの会を立ち上げたのって、いつ頃だったんですか?
藤木 昨年2018年の4月に立ち上げたんです。個人的な話ですが、私には聞こえない3歳年下の弟がいて、弟と取っ組み合いのケンカをすると、周囲から「お姉ちゃんだから」「聞こえるのだから」と怒られて・・・。その度に「聞こえる、聞こえないとか言われるのはおかしいよね」と思っていて、そのまま「きょうだいは対等でしょ」って反発しながら育って。学生の時には「青い芝の会(※)」の強烈な自己主張と「ろう文化宣言」から強い影響を受けたんです。
※ 青い芝の会は、障害者のうち脳性麻痺者による障害者団体。1970年代から80年代にかけて、世間から“過激”と言われるような運動をしながら、さまざまな問題提起を行った。

SODAの会代表の藤木さん(左)
持田 その「ろう文化宣言」っていうのは、具体的にどんな宣言だったんですか?
藤木 耳が聞こえない人の中でも「ろう者」は手話を言語とする人のことであると定義した宣言なんです。聴覚障害者で手帳を持っている人が35万人くらいなんですけど、そのうち手話を使って生活している人って6万人くらいしかいないんですよ。
持田 ほんとに~?少ないんだ。
藤木 「私たちは聴覚障害者や耳が聞こえない人」ではなくて、「私たちはろう者です」と強く出した宣言で・・・。
持田 それが「ろう文化宣言」というものなんですね。
藤木 はい。わたしはそこから強い影響を受けました。そうやって自分たちが思っていることをはっきり出すって、かっこいいなって。ちょうど大学生の頃、「きょうだい」という言葉を知って、私自身もいつか「私はきょうだいです」って言いたいなと思いました。
でも、SODAの会を立ち上げた一番の理由は、やっぱり、同じような体験をした人同士で、ほんとに、ただ会ってみたいな、話してみたいなという気持ちをずっと持っていて。
持田 同じ立場の人と会ってみたい・・・すべてはそこから始まるんじゃないかなって思うんですよね・・・。
お互いに、ちゃんとケンカがしたい
持田 SODAの会を主催して、参加者のみなさんからはどのような声が集まっているのでしょうか?
藤木 SODAから多いのは、「聞こえるから、聞こえないからはやめてほしい」「きょうだい同士は平等がいい」という声ですかね。ただ面白いのは、聞こえないデフの立場も「聞こえないからはやめて」とか「お互い遠慮なく話したい」とか「ケンカもちゃんとしたかった」と話していて。

SODA(ソーダ)の会の様子
持田 わたしもお兄さんとケンカができなくて、寂しかったんですよ。
藤木 ・・・ケンカしたいですよね。聞こえない場合も、家族やきょうだい同士が手話などの共通のコミュニケーション手段で会話できるケースは本当に珍しくて、コミュニケーションする手段自体がないからケンカもできない、という話はよく聞きます。

持田 藤木さんは手話は使っていたんですか?
藤木 私が子どもの頃は、弟も含めて家族全員が手話はできなくて、表情と身振りとか口を大きくゆっくり、はっきりとか・・・。SODAの会で「ケンカできるのはうらましい」って言われることもあるけれど、私が声で話していたことって弟にどのくらい伝わっていたのかな、と今は思いますね。
持田 なるほど、こうやって聞いてみないとわからないものですよね。今は、藤木さんは手話ができるんですよね。どこで習って、何年くらいかかって手話ができるようになったんですか?
藤木 最初の数年は市町村の講習会やNHKの番組を観ていたんですが、それだけだと足りなくて、専門学校にも2年間通いました。弟が直接の理由というより、大人になってから仕事の関係やデフの友人がきっかけで、一緒に話したいと思って習い始めました。手話の専門学校に行ったのは、そこにろう文化宣言を書かれた先生がいらっしゃって、「きょうだい」のムーブメントのヒントを得られたらという気持ちもありましたね。
きょうだいだけで話すのではなくて
持田 SODAの会には、聞こえないデフの方も参加されるんですよね?そういうのって珍しいというか。きょうだい会というときょうだいだけが参加していますよね。きょうだいの立場の方と、障害当事者の立場の方が一緒に参加しているんですよね。
藤木 はい、そこはユニークなチャレンジだと思います。小中学生、高校生、大学生から、私と同世代の30代も、上の世代は80代までいます。私たちから見て、親の立場の人、おじいちゃん、おばあちゃんの立場の人もいれば、デフが結婚して生まれた子どものChildren of Deaf Adult、CODA(コーダ)、そして、さらにその子ども、孫のGrandchildren Of Deaf Adult、GODA(ゴーダ)まで、5世代の参加があるんですよ。

5世代にわたり、小学生から80代まで
持田 おぉぉぉ、GODAっていうのは初めて聞きましたね。小学生から高齢の方までそろって一緒になって話すんですね。
そういう隔たりがない世界観を藤木さんご自身がつくっていらっしゃるのをフェイスブックの投稿とかツイッターとか見ていると、そういう世界観がみえるんですよね。
こういうのって会を主催する人のカラーみたいなものが出てくるので、藤木さんっていつも「みんなおいで~」って言う感じじゃないですか、いつも。「来ていいよ~、とりあえずおいでよ~」ってね。そこがね、まさに多様性を認め合う世界観を実践していらっしゃるなと思っているんですよね。
藤木 ありがとうございます。多様な方々が参加してくださる中で、会の主役はやはり子どものSODAになりますね。子どもの声に共感しながら大人も一緒に考え、未来と次世代につなげていこう、という趣旨に賛同する方が参加してくださっています。子どもSODAのエピソードについて、大人のSODAとデフを中心に「その通りだね」「自分も同じような体験をしたよ」と共感しながら、親子やきょうだい同士がお互いにうまくやっていくには「どうしたらいいかな?」と一緒に考えます。子どものSODAと親御さんは現在進行形ですごく変わっていくんですよ。
持田 親子での参加だと課題の解決が早そうですね。たしか、SODAの会を立ち上げる前までは、親や弟や聴こえないデフの友人、知人との関係の中で迷いがあった、とのことですが、お伝えしていただける範囲でどのような迷いがあったのでしょうか?

藤木 きょうだい関係や家族についての本音を外に出すことで反感を買ったり、離れていく人もいるんじゃないかなと心配でした・・・。でも、意外にデフの友人や知人が共感してくれたのが嬉しくて。「きょうだいや家族のことは自分も気になっていた、ずっと一緒に話したかった」という言葉をいただいたり。デフと一緒にやっていく中で、デフもSODAの考え方に賛同してくれたりもするし、SODAからだけじゃなくてデフの立場からもこう思うと言うことで、親御さんへの説得力が違うというか。
持田 確かに・・・きょうだいだけで話していると、「親やデフは本当はどう思っているのか」ってわからないですよね。それがSODAの会ではその場でわかるっていいですよね。さて、そんな藤木さんの拠点は東京なんですが、他の地域にもこういった会はあるのでしょうか。
藤木 今のところありませんが、出張の機会に関西の子どもソーダと親御さんにお会いしたりしています。SODAのスタッフもひとりは広島にいるんですよ。
持田 活動が広がっていくといいですね。何よりも、親と子どもが多くの方々と一緒に話せる機会を作っている藤木さんの活動はとても注目されることだと思います。藤木さんが、このSODAの会でもっとも伝えたい事って何ですか?
藤木 きょうだいだけで話すんじゃなくて、特に子どものSODAは親御さんたちと一緒に来てもらうと、その場で家族が変わることですね。
持田 すごくいいですよね。さて、もっと聞きたいところがあるんですけれども、そろそろお時間となりました。今回のゲストは、SODAの会代表の藤木 和子さんでした。藤木さん、いかがでしたか?
藤木 なんかラジオって新鮮でいいですね。ありがとうございました
持田 藤木さん、ありがとうございました。
「なんてたってCAN!」ラジオ放送ですべての収録内容をぜひお聴きください。
http://honmaru-radio.com/can0005/

今後の予定・お知らせなど
聞こえないきょうだいをもつ SODA ソーダの会の予定
7月28日(日)
午前:「家族の想いと願いに目を向けて」
聴力障害者情報文化センターが主催、厚生労働省、東京都、全日本ろうあ連盟が後援予定
聴覚障害の支援の専門家の方々、SODA、CODAのパネルディスカッション
午後:「家族みんなでカンガエループロジェクト」キックオフミーティング
親御さん、SODA、デフ、CODAのパネルディスカッション
NPO法人インフォメーションギャップバスターと共催
イベント開催レポート
https://www.infogapbuster.org/?p=3193
聞こえないきょうだいをもつSODAソーダの会ホームページ
https://soda-siblings.jimdofree.com/
https://www.facebook.com/kazulinlin
https://twitter.com/kazufujiki
次回のきょうだいの集い
2019年7月6日(土)
第64回きょうだいの集い
https://canjpn.jimdo.com/sibchat/
ケアラーアクションネットワークの HP
https://canjpn.jimdo.com/
CAN イベント開催スケジュール
https://bit.ly/2WtbCxn
持田 恭子のFacebook
https://www.facebook.com/kmozumi
CANのFacebookグループ
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CAN Twitter
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【Sibkoto編集部より】
Sibkotoでは、きょうだい、きょうだい児(おいめい、いとこの方含む)についての体験談を募集しています(匿名での掲載可)。親御さんや家族、支援者等の立場の方も歓迎しています。体験談はタイトル、中見出しを含めて2000文字以上の文章とさせていただきます。体験談掲載希望の旨、お問い合わせページ よりお待ちしております。