2019 . 06 . 14
きょうだい支援の会について
東京都新宿区や多摩地区などで主に活動を行い、今年で設立22年目を迎えるきょうだい支援の会。その活動内容や想いについて運営者の有馬桃子さんに伺いました。

有馬桃子 さん (きょうだい支援の会)
きょうだい支援の会運営係。知的障害のある妹(故人)と二人姉妹で育つ。重症心身障害児施設等にて心理士・音楽遊び講師として活動中。きょうだいや家族に関する講演や、親向けのワークショップも行っている。
きょうだい支援の会について
「きょうだい支援の会」はきょうだいのためのセルフヘルプグループで、1998年に設立して今年で22年目になります。きょうだいによるきょうだいのための活動を目指して始まりました。
対象の方はおおむね18歳以上のきょうだいで、兄弟姉妹の障害や疾患の種類は問いません。私のように、兄弟姉妹が既に亡くなっている方も参加しています。
きょうだいだけで安心して話をしたい、という当初の理念がありますので、参加できる方は血縁上のきょうだいに限定しています。また、きょうだいの立場であっても、例会参加者のプライバシーを守るためにきょうだいを対象とした論文を執筆されている方の参加はご遠慮いただいています。
主な活動は、定期的な例会(集まり)です。例会の初めには、いくつかの約束事(つらい時は無理をしない・他の人の話を口外しない・批判しないなど)を読み合わせた上で行い、安心な空間作りにご協力いただいています。
1回の例会の時間は2時間で、新宿駅近くのカフェの個室でこぢんまりと行っています。最近ですと6人から8人くらいで集まることが多いです。年代は、20代から50代くらいまでと幅広いですね。費用は、室料や飲み物代で1人1,000円程度になります。
フリートークをすることが多いですが、その前にワークシートを使ったプチワークをご案内しています。今日の自分のニーズや、ごく最近あった良いこと探しなどを書くのですが、今の自分の整理やポジティブな視点を持つ練習をするのが目的です。
今までの歴史と新たな企画

まだ私が運営に携わっていない頃の話になりますが、「きょうだい支援の会」では2001年に米国きょうだい支援プロジェクトのドナルド・マイヤーさんの初来日講演ときょうだい児のためのワークショップ(Sibshops)のファシリテーター養成のための2日間トレーニングを開催しました。これらの国際的なプロジェクトを企画実行してきたのが、「きょうだい支援の会」立ち上げメンバーのひとりで、現在「きょうだい支援を広める会」代表の有馬靖子さんです。その時の資料として翻訳した冊子は、いまでも各地で活用されています。冊子の発行および米国きょうだい支援プロジェクト関連のイベント開催は、今年の3月から「きょうだい支援を広める会」に移管しています。
ちなみに、靖子さんと私は名字が一緒なので、同じ人と思われたり姉妹なの?と聞かれることもありますが、偶然の一致なのです。なにか不思議なご縁を感じています。
設立以来、例会を積み重ねてきましたが、今変化の時を迎えています。昨年から例会の開催回数や運営係4名での例会分担を変えました。また、「大人になったきょうだいが、今まで誰にも言えなかった気持ちや、ひとりで背負ってきた様々な体験を共有できる場」としての原点は大切にしながらも、新しい試みを初めています。
そのひとつが「シニアミーティング」です。「自分自身が超高齢化社会をどう生き抜くか、家族の介護にどう対処していくか」など、シニア層が直面する課題について話し合う場で、概ね55歳以上の方を想定していますが、今その課題に直面している方のご参加もOKです。シニアミーティングは、その年代の運営係が担当で、年2回多摩地区で行います。5月に第1回が行われましたが、親と障害の兄弟姉妹のダブルケアの問題や介護保険について、きょうだいの心理的負担など深い話題が次々とあがっていました。障害者の家族の高齢化は、これから見過ごせない問題ですので、このようなテーマをじっくり話せる場の必要性は増してくるのではないかと感じています。
新宿の例会は私の方の担当になります。今年度は福祉関係の情報提供に力を入れたいと思っています。きょうだいの大きな悩みのひとつが将来の不安ですが、その中には福祉のことが全くわからないゆえの不安もあると思います。実際、私も福祉の世界に関わっているのですが、福祉制度は本当にややこしくて。きょうだいが自分で調べようとしても、お手上げになってしまうことが多いと思うのです。
春の例会では、障害者手帳や福祉サービス、きょうだいの相談出来る場所といった情報提供を試みにとしてさせていただきました。そうしたら、きょうだいの抱える実際の福祉的な困り事が見えてきまして。これはもう少し深めていきたいと思い、6月に相談支援専門員を招いての学習会を行うことにしました。相談支援専門員は、障害児者と福祉サービスをつなぐ重要な役割の人ですが、なかなかきょうだいとの接点がありません。学習会の中で、実際に会ってお話を聞くことで、福祉制度へのハードルがちょっとでも下がって、自分なりの家族への関わり方を考える材料になったらと思っています。
例会で話していること

例会で使用している会議室の様子
会を運営していて印象的なのは、ここに来て初めて自分以外のきょうだいに会った、初めて自分の気持ちを言ったという方が多いことです。きょうだい同士、自然と知り合いになるってなかなかないのですよね。ネガティブな話や家族の中で起きていることは、友達にも言いにくかったりするので、胸にしまっておくしかないこともありますよね。
フリートークでは、深刻な話もあってもいいし、兄弟姉妹の面白いエピソードもあってもいいし、兄弟姉妹や家族だけでなく自分の話があってもいいと思うんです。自分の心の中にあることを言葉にするって、大事なことなのですが、不安があるとできません。相手の反応とか気になりますよね。その点、きょうだい同士だと、感覚的に共有できることも多いし、いくつかのルールがある場なので、話しやすいと思います。
きょうだいと対面で話をすることって、肩の荷をちょっと下ろしたり視野を広げるきっかけになったりすると思うのです。あるある話とかしながら笑ったり、他の人の話をきっかけに気づくことがあったり、言いたいことを言ってみたり。そんなことをしていると心の余裕が少しできるんじゃないかなと感じています。心の余裕がないと、考え方も辛くなりやすいし、行動する気力もわかない。自分の人生の中で、ちょっと立ち寄って一休みしたり、情報交換できる場であったらいいなあと考えています。
例会に参加するのは勇気のいることだと思うのですが、無理に話をさせたりということはありませんからご心配なく。話を聞くだけでもOKです。参加するまでに何年もHPを見ていた、という方もいらっしゃいますし、私も初回参加するまでにかなり時間がかかりましたから、ためらう気持ちはわかる気がします。
まずは、ちょっとでもご興味がありましたら、 ssgj_contact@googlegroups.com にご連絡いただけたら嬉しいです。
例会のご案内はHPとFacebook、ここシブコトさんでも行っています。
絶対的に弱い知的障害の妹

私も最初はきょうだい支援の会の例会の参加者でした。2001年に参加をして以来、行ったり行かなかったりを繰り返していたのですが、2009年から運営に携わるようになりました。
きっかけは、妹と家族が先の見えない状況に陥ってしまい、切羽詰まってしまったことです。他のきょうだいだったらどうするんだろう?と藁をもつかむ気持ちでした。妹は、仮死出産のダメージで知的障害になったそうです。母の話で心に残っているのは、大学病院の医師から「この子(妹)は生命力の乏しい子なので、どう育つかはお母さんの頑張りにかかっています」と言われたいう話です。そんなことを医師に言われたら、親は必死になりますよね。今振り返ると、親にとって妹は知的障害の子である前に、手を尽くして育てないと命にかかわる絶対的に弱い子で、それに比べたら私は元気な子という無意識の対比もあったかなと思います。
妹はかなりおとなしい子だったので、私が妹に困らされたという経験はあまりないのですが、小さな我慢はたくさんあって、でもそれは当然のこととして受け入れていたなーと最近気づきました。ここ数年子どもの頃のエピソードを見直しているのですが、そのたびに気づくことがあって、そんなこと私思っていたんだ!?・・・と今でも驚くことがあります。けっこう忘れているというか、蓋をしているんだなあと。
親が手を焼いたのは、むしろ私でした。親に言わせると年中反抗期、いつも不機嫌で不安な子どもでした。怖がりなので学校とか外ではおとなしくしているのですが。反抗しながら自分はすごく悪い子だって意識もあるんですよ。だけど、うまくできないで親が怒るようなことをしてしまう。それでもっと自分のことが嫌いになっていく悪循環でした。寂しいとか自分に注目してほしいっていう気持ちを抱えていて、だけどうまく表現できなくて、反抗的な態度になったのでしょうね。私が講演などで「きょうだいの困った行動はヘルプサイン」と力を込めて話しているのは、自分の経験が大きいです。子どもって困っても自分でいい解決方法を見つけられなくて、大人の困ることをやってしまったりするのですよね。まわりの人がそういう視点を持つことは大切だと思います。