2019 . 01 . 18

きょうだい児のつらさから考える家族支援

障害児の兄弟姉妹、きょうだい児。きょうだい児には、周囲には理解しづらい困難があるといわれます。健常に(定型発達として)生まれてきたきょうだい児への支援、障害児を抱える親への家族支援について、吉川かおりさんに伺いました。


障害児を支援するだけでは親の生活を支えきれない


 

Image

様々な生活上の課題がある中で、障害児支援だけでは親の生活を支えられない。



 障害者の家族支援、親への支援というのはとても大事です。ここ数十年で障害児・者を支えるサービスはすごく発達してきたけれど、それだけでは親の暮らし全体は支えきれません。人の暮らしはジグソーパズルのピースみたいに、小さなことを誰がいつどこでやるのかを決めて当てはめなければいけなくて、この当てはめ直しに失敗すると暮らしが壊れてしまう。子どもが生まれると、父母になるための学習をしたり、子どもの世話の仕方や生活のリズム・パターンの変化に適応したり、夫婦間で子育て方針の調整をしたり、おじいちゃんおばあちゃんや親族との関係調整をしたり、自分は何のために生きているのかということを再検討しないといけなくなります。
 
 更にその子に障害がある場合には、障害への対応スキルを学んだり、自分の人生の意味を考え直したり、サービス相談場所も探したりしないといけないし、自分の人生と子供の人生のバランスをどうやって保ったら良いかも考えないといけない。でも、既存の障害福祉サービスは、障害への対応スキルは教えてくれるかもしれないけど、その他のことを(それを支えることを正規のサービスとして)支えてはくれません。他の部分、例えば障害がある子が生まれて悲観に暮れて・仕事を辞めたくないのに辞めざるを得なくなったことが悔しすぎて…といったことを誰が支えてくれるのでしょうか?
 専門職が支えるのもいいと思いますが、大体の親御さんは、自分がつらい思いをしている真っ最中に、そうでない立場の人からアドバイスを言われると腹が立つんですよね。(経験していない)あなたに何がわかるの?って思ってしまいます。だから、同じ経験をしたっていうのがすごく大事になるのです。障害への対応スキル以外の部分を支えることができるのは、同じ経験をした人だからこそ。なので、私は親の会活動を応援しています。きょうだい会活動を応援しているのも同様で、やっぱり同じような体験をし、そこから得られた知恵というものは財産になるのです。



親子それぞれの自立を目指す



Image

親向けのワークショップテキストの一例。「あなたの夢プランシート」では親自身の夢を書いてもらう。



 親離れ子離れを進める場合も、ある時期が来たら生活リズムやパターンの変化などを見直して、夫婦関係の調整をするとか、自分は何のために生きているのかをもう一度問い直して、ジグソーパズルの当てはめ直しをしないといけません。子どもが乳幼児期のときの関係から、変わらなくてはいけない。それで子離れが達成できるんですよと言っています。
 私は、親御さん向けに自分や子供との関係を客観的に見てもらうためのプログラム( 全日本手をつなぐ育成会 『障害のある子どもがいても、私らしく活きるための家族支援ワークショップ 実施マニュアル』 ※執筆時点では売り切れ )の開発に携わっていますが、これを使って親も子もお互いに自立した自分の人生を目指すためには何が必要なのかの点検をしてもらっています。例えばこの中に「あなたの夢プランシート」というのがあって、親に「自分の」夢を書いてもらい、実現計画を立てるんですね。でも、障害のある我が子と一心同体で共依存が強いと自分の夢が書けないんです。若い親御さんの中には、障害児の母になったら自分の夢なんて見ちゃいけないものだと思っていたけれど、夢は見てもいいんですね、とおっしゃった方もいるのですが…。いいんですよ。障害のある子がいても自分の夢を追いかけて。たった一度きりの、大事な人生なのですから。
 もちろんこれは、子どもへのかかわりを放り出して良いという意味ではなく、適切な距離感をつかんでバランスを考えるためのツールとして用いています。
 
 繰り返しになりますが、障害福祉サービスというは障害のある方がいる家族の暮らしを再構築するためのサービスの一部でしかなくて、親のやっていることはそれだけでは支えられません。親の生活を支えられないと家庭が苦しくなる。家庭が苦しくなるときょうだいにも影響が出てしまう(きょうだいが”にわか”○○をしなければ生活が回らなくなる)。家族支援の必要性というのはこういうところにあります。

通知

閲覧の確認

閲覧しようとしているコンテンツは、多くのユーザーが違反報告しており、不快な内容が含まれる可能性があります。閲覧を続けますか?