2019 . 01 . 11

あなたが「子ども」でいられるように

難病の肥大型心筋症を患う弟とともに思春期を過ごした清田悠代さん。NPO法人しぶたねの立ち上げまでの経緯や今後の活動について伺いました。


病気で大変な人のご家族にお茶を淹れるような仕事をしたい


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 このドナルド・マイヤーさんとの出会いが今のしぶたねの活動につながるのですが、それまでもずっと、心のどこかで小さなきょうだいのための活動をしたいと思っていました。
 それには私が中学生ときの出来事が関わっていて、1つは、病院の廊下できょうだいがひとりで過ごす姿を目の当たりにしてきたことです。入院している子どものきょうだいって、兄弟姉妹であっても中学生以下の子どもは感染予防のために病棟に入れない病院がほとんどで。保護者の方が面会に行く数時間、きょうだいたちは廊下に座って待っていました。赤ちゃんが1人ベビーカーで廊下に置かれていることもありましたし、2歳くらいの小さな子がずっとお母さんを求めて泣き続けている隣に座って一緒に悲しい気持ちになって。中学生の私には、この子を大人が誰も気にしていないように見えて、この子たちはちゃんと育っていけるんだろうか?この状況が許される社会ってなんだろう?って、絶望的な気持ちになったんです。
 もう1つは、高校受験の2日前に弟の心臓が止まって生死をさまよっているとき、私がICUの前の廊下で制服姿で1人で泣いているときに、あたたかいお茶を出してくれた人がいて。後から聞くとそれは父親の知人で、たまたまその病院に入院中のご家族の面会に来られていた方だったのですが、すごいですよね。家族が死ぬかもっていう状況の見ず知らずの中学生に話しかけてお茶を出して隣に座って話しかけてくれるって。この経験から、こんな風に病気の人のご家族にお茶を淹れてお話を聞けるような仕事をしたいと思うようになりました
 
 2001年にドナルド・マイヤーさんが来日されて、きょうだいのためのワークショップ(Sibshops)のファシリテーター養成トレーニングが開催されたときに、ワークショップに参加していた子どものきょうだい一人ひとりにマイヤーさんが「きみは一人じゃないんだよ」って話しかけていました。私はそれを見ていて、自分の中の小さな自分にそう言ってもらえたように感じて涙が止まらなくなって。私もこういう活動をしたい、「ひとりじゃないよ」って日本のきょうだいたちにも伝えたいという気持ちで、しぶたねの活動を立ち上げました。

健康なきょうだいを支援する意味



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「きょうだいの日」では小学生のきょうだいが大歓迎されて思いきりあそぶ場を提供する(写真提供:NPO法人しぶたね)



 私たちは「きょうだい児」という何か特別な子どもを特別な方法で支援しているわけでもないし、病気の子どもよりきょうだいの方が大事ですって言っているわけでもないんです。「子ども」は、家族が病気になってしまったときにこういう風に感じたり、こういう状況になりやすいから、そうならないようにみんなで工夫をできたらいいな、私たちもそのために少しでも役に立てることがあればいいなと思っています。でも、病気でもないきょうだいになぜ支援がいるのか、過不足なく伝えるのはとても難しいことだと感じています。例えば、病気が治ったり、その子が亡くなってしまったら、きょうだいのつらさもそれで終わると思われていることがありますが、きょうだいにとっては子ども時代の経験が人格形成に大きく影響したり、大人になってもしんどさが続いてしまうことがあります。でも例えば親御さんにきょうだい支援の必要性について伝えるとき、親御さんの気持ちを想像すると、突然わが子が難病だと言われてパニックなところに、きょうだいもこんなに大変です、ということだけが伝わったら、きっとすごく苦しいだろうなって。だけど、実際に大人のきょうだい会に行ってみると、心療内科に掛かっている人が多いなって感じたり、子どもの精神科の先生と話していると、きょうだい児をよく診るよって聞いたりもして、それをもしかして予防できるならしたいと思うし、この辺りのバランスは常に悩んでいます。
 特に、私たちが出会うような親御さんは、すでにきょうだい支援の必要性を感じて心配しておられたり、ご自身を責めておられる方々が多いので、これ以上不安を煽りたくないという気持ちと、世の中の、きょうだいに出会う、きょうだいの味方になれる方々にはもっとわかってほしいと思う気持ちと…きょうだいにも支援が必要なことがあるよって伝えるのは何でこんなに難しいんだろう、と悩みながら試行錯誤しています。



しぶたねでの活動



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きょうだいの応援団を増やしつながる研修ワークショップの様子(写真提供:NPO法人しぶたね)



 しぶたねの活動では、原点である病院の廊下で過ごすきょうだいたちとあそぶ活動があります。今はボランティアさんたちに協力いただいて月2回がやっとなのですが、病院の廊下でぽつんと待っているきょうだいのそばには大人がいるということが当たり前のことになるように、できることを考えています。
 また、アメリカのシブショップをベースにした「きょうだいの日」というワークショップを開いていて、小学生のきょうだいに集まってもらって、仲間と過ごす安心の空気の中でおもいきりあそんでもらったり、親御さんをひとりじめして過ごしてもらったり、それを卒業したきょうだいたちと再会できる日をつくったり、他の団体さんや病院と協力して出前「きょうだいの日」を開いたりしています。
 間接的なところでは、「きょうだいさんのための本」という名前の、周囲の大人がきょうだいに思いを伝えるきっかけになることを目指してつくった小冊子を配布したり(病気をもつ子どものきょうだい向けの①と、兄弟姉妹を病気で亡くした子ども向けの②と、あわせて57,000冊)、保健所や病院、大学、企業などで、きょうだいの気持ちを知っていただくための講演をさせていただいたり、あと、きょうだい支援の輪を広げるために、きょうだいの応援団(シブリングサポーター)を増やしてつながる研修ワークショップとミーティングを2016年から各地で開催中です。
 
 新しいところでは、アメリカなどの国にはシブリングデー(=きょうだいの日:毎年4月10日)という記念日があって、きょうだいと一緒に撮った写真をインスタにアップしたり、きょうだいで行くと割引を受けられるサービスをお店が考えたりしています。この日を日本でも記念日制定して、海外みたいにきょうだいで手紙やプレゼントを贈り合うキラキラしたイベントとしてだけじゃなく、天国のきょうだいを思ってもいいし、血が繋がってないけどきょうだいみたいに思ってる人に感謝してもいいし、何もしなくてもいいし、頑張っているきょうだいたちを知ってくれるのでもいい…という日にできないかなあと思っています。将来的には、この日の前後で全国できょうだい支援のイベントが盛り上がったり、きょうだい支援の活動をするための資金が集まるチャリティイベントにつながったり、きょうだいたちに応援する人の気持ちが届くようにしていけたらと思っています。
(現在、2019年4月の記念日制定に向けて、発起人になってくださる方を募集しています http://sibtane.com/siblingsday#section-10
シブリングデーに合わせてきょうだい支援の啓発コースターを1万枚使っていただくキャンペーンにご協力いただけるお店や会社、アンバサダーさんも募集しています http://sibtane.com/siblingsday#section-18

誰もが理解してくれるように社会を耕す



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「きょうだいの日」に登場する “シブレンジャー(イエロー)“ と一緒に



 しぶたねは小さいボランティアグループから始まって13年ほどボランティアとして細々と活動してきたのですが、2016年に方向転換してNPO法人格を取得しました。法人化してもっと活動を広げよう、社会にきょうだい支援を知ってもらおうと思ったのにはきっかけがあります。
 小学生の時に私たちのイベントに来てくれたきょうだいがいたんです。その子には障害をもつ弟がいました。そのきょうだいさんが大人になって好きな仕事に就いて、よかったなあと思っていたときにお母さんが突然亡くなってしまったんです。お母さんが運ばれた病院に駆けつけたときに、これからは自分が弟の面倒を見るから仕事は辞めることになると思うって話してくれて。障害をもつ弟の支援者の人は、悪意なく、きょうだいが弟を支えるキーパーソンだって思って、きょうだいの人生を守ってあげなくてはとまず考える人はいなくて…わかってはいたんですけど、きょうだいってこんなにも守られていなくて不安定な場所に立たされているのかと、改めてショックを受けました。きょうだいの人生も守られることが当たり前になるように、社会を耕していくような活動にももっと力を入れていこうと思い、法人格を取得しました。社会の理解が広がることで、親亡き後に病気や障害をもつ兄弟姉妹をきょうだいが支えるのが当然と思われたり、きょうだいが結婚を考えるときに相手の両親に理解がなかったりということがなくなればいいなと思います。
 
 2019年の3月にはしぶたねを作るきっかけをくださったドナルド・マイヤーさんをアメリカから招いて、東京・仙台・大阪でご講演いただきます。マイヤーさんは世界のきょうだい支援を牽引してこられた方で、2018年に引退されたので、来日は最後の機会になるかもしれません。きょうだい支援にご興味がある方は是非ご参加ください。

東京講演
病気や障がいのある子どもの「きょうだい」の持ちうる悩みとその支援方法について学びます。
https://www.kokuchpro.com/event/ssp_lecture20190316/

仙台講演
東京講演と同じ内容の短縮版になります。
http://blog.canpan.info/parukeblog/archive/171

大阪講演
「アメリカのきょうだい支援の始まりと広がり」と題して、マイヤーさんのきょうだい支援の歴史をお話いただきます。あわせて日本の様々なきょうだい支援の現状もまとめて報告予定です。後日作成予定の講演録のみのお申し込みも受け付けています。
https://www.kokuchpro.com/event/dmeyer/

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