きょうだい児とは ~特有の悩みときょうだい児との付き合い方のヒント~

「きょうだい」または「きょうだい児」とは、障害児・障害者の兄弟姉妹を指します。(以後「きょうだい」と記します。)

 きょうだいは、障害児とともに子どもとして育てられながら一方で障害児のケアやお世話係を期待されるなど、障害児・者との関係や、親との関係、また家庭外の社会での経験など、さまざまな場面でその影響を受け、時として彼らが生きづらさを抱える原因になります。

 兄弟姉妹が抱える障害やきょうだいの家庭環境もさまざまですが、きょうだいに共通する特有の悩みは以下のようなものがあります。

 きょうだいの生きづらさは、障害者支援という社会課題と深く関連していることから、本人たちが公に声を大にして主張することはあまりありません。そのためもあって現在の社会においては、きょうだいのことが十分に理解されているとは言えない状況となっており、それがいっそうきょうだいの生きづらさや孤独感につながっている側面もあります。

 当ページでは、このようなきょうだいの生きづらさを、「きょうだい特有の悩み」として、きょうだいたちが普段口に出しづらいことも含めて解説します。一部の表現については、議論を呼ぶ部分もあるかもしれませんが、きょうだいの状況についてきちんとお伝えすることが主旨ですので、どうかご容赦いただければ幸いです。

1. 親が障害のある兄弟姉妹のケアに忙しく、孤独感を抱きやすい

 障害を持つ子どもの親は、障害のある子への対応で手いっぱいとなり、きょうだいと向き合う時間があまりとれなくなることがあります。障害の状態が悪化している時や、障害の診断などで親たちが混乱している時、きょうだいはよくわからない状態でただ待たされることもあります。

 このため、きょうだいは、自分だけ"かやの外"にいるように感じたり、障害のある兄弟姉妹が、親や大人にたくさんかまってもらっているのを見てうらやましく感じたり、「寂しいと思っている自分に誰も気づいてくれない」と感じることがあります。

 きょうだいは、親が大変な状況にあることをそばで見て知っているため、我慢しがちですが、親にたくさんかまってほしい時期に、ほかの兄弟姉妹に親がかかりきりになってしまうことは、子どもにとってはつらいものです。

 このような「親の目が、障害のある兄弟姉妹の方にばかり向いてしまう」状態は、子ども時代だけでなく青年期以降も続きがちです。そして、その時は大丈夫なように見えても、20代・30代になった時にメンタルに不調をきたすことにつながることもあります。

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参考リンク
■きょうだい支援サイト紹介(スペシャルニーズのある子供たちに関する情報サイトCOMUGICO)
https://comugico.info/category5/kyoudai/

2. 兄弟姉妹の発作や命の危険がある様子などを間近で見て、辛いと感じる。

 兄弟姉妹に、発作があったり、命の危険がある障害がある場合、近くで見ているきょうだいも、辛い気持ちを抱えることがあります。

 普段一緒に遊んだりしていた兄弟姉妹が新たに障害を負ってしまった場合はショックを受けますし、 お父さんお母さんが悲しんだりする様子には、胸を痛めます。 きょうだいが幼い時は、兄弟姉妹の障害のことがきちんと理解できず、「自分のせいでこうなったのではないか」と罪悪感を持ってしまう場合もあります。

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3. 「えらい子」・「できる子」であることを期待される。

 「健常児」であるきょうだいは、障害のある兄弟姉妹や親のことを色々と助ける、「優しくてしっかり者」のイメージを持たれがちです。 実際きょうだいは、障害のある兄弟姉妹のそばにいたり、必要なことを手伝ったりすることも多いため、周りの大人たちからは、よく「xxちゃんの面倒を見てあげて、えらいね」などと言われます。

 しかし、きょうだいは、これを聞くと「自分はそんなにえらくないのに」と後ろめたく感じたり、「自分は『障害のある兄弟姉妹の面倒を見る優しい子』でなければならない。」という、自分が縛られるような気持ちになって苦しく感じることがあります。

 また、きょうだいは、兄弟姉妹や親を助けるだけでなく、きょうだい自身のことについても、「健常児なのだから」と、普通以上にがんばったり優秀であることを期待されがちです。 きょうだいは、期待に応えて頑張ろうとすることもありますが、この期待を理不尽に思ったり、プレッシャーが辛いと感じることもあります。

 このようにきょうだいは、障害がない分「この子は大丈夫」と思われがちなせいか、親や周りの大人たちから、色々と期待を受けて育ちます。そして次第に「自分ががんばってしっかりして、兄弟姉妹や親を助けなければならない」という義務感を持つようになるきょうだいも多くいます。 この義務感は青年期以降も続き、障害のある兄弟姉妹の支援を周りの期待どおりにできなかったり、支援を「嫌だな」と思った時、また、周りの期待どおりに勉強や進学・就職ができなかった時、強い罪悪感を持つことがあります。

4. 子どもの頃から、自分のことよりも障害のある兄弟姉妹のケアを優先する生活を送る。ヤングケアラーとなる場合も。

 障害のある兄弟姉妹のいる家族は、どうしても障害のある兄弟姉妹のことを一番に優先せざるを得ません。きょうだいも、親や障害のある兄弟姉妹の大変さを知っているので、あまりわがままを言わないことが多いようです。 兄弟姉妹の障害が、「コミュニケーションをとりづらい」、「ルーティンを守れないとかんしゃくを起こす」などの特徴を持つ場合は、さらにきょうだいは我慢したり、やりたいことを兄弟姉妹にゆずってあげたりすることが多くなります。

 また、きょうだいは、子どもの頃から、障害のある兄弟姉妹のケアの一部を担っているケースもあります。(いわゆる「ヤングケアラー」に該当します。)誰かが常に見守っていないと危ない行動をとってしまうような障害の場合は、親が別の用事をしている間、どうしてもきょうだいに見守りを頼まざるをえない、という事情もあります。 結果的に、同年代の子らと遊んだり活動したりする時間が、一般の子どもに比べ少なくなってしまうきょうだいもいます。

 また、障害がある子のケアで苦労が絶えない親に対し、精神的なケア・気遣いを日常的に行うきょうだいも少なくありません。 このように、きょうだいは、同じ子どもである(障害のある)兄弟姉妹に比べ「二の次」となってしまいがちであり、さらにはそれを「仕方ないこと」とされがちです。 また、障害がある兄弟姉妹のために「なにかをやってあげること」が多いですが、それは「当然なこと」とされがちでもあります。 これらを不満に思ったところで、誰を責めるわけにもいきません。

 このため、同年代のほかの子たちよりも、友人と遊ぶ時間が短く、家の用事に費やす時間が長くなるきょうだいも少なくありません。  そして常に障害ある兄弟姉妹のことを優先する生活の中で、親との関係において葛藤を感じるようになることもあります。

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参考リンク
■障害のある人に対する相談支援について(厚生労働省HP)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/soudan.html
■ヤングケアラーについて (厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/young-carer.html

5. 障害者やその家族に対する世間の偏見に悩まされる。

~障害者への偏見~
 障害がある人の行動は、一般の人々からは驚かれたり、好奇の目で見られたり、迷惑がられたりすることがあります。それが、子どもや思春期の頃のきょうだいにとっては、とても恥ずかしくて苦痛な場合があります。 でもそれを言うと親が悲しむこともあるので、なかなか言うこともできないというきょうだいもいます。

~障害者の家族への偏見~
 近年は、「障害者の人権を尊重し、障害者のことを支援しよう」という考え方が社会に浸透しつつあります。 ただ、同時に「障害者を支えるのはその家族である。」という偏った考え方も根強くあります。そして世間では一般的に「仲の良い家族が力を合わせて障害者の支援をする」ことや「優しいきょうだいが障害のある兄弟姉妹を助ける」ことが好ましく思われていて、これを推奨する風潮も一部であります。

 このため、障害ある兄弟姉妹・親との間に悩みを抱えているきょうだいは、そのような悩みや「自分は障害のある兄弟姉妹の支援をしない」という選択について、「誰かに相談したくてもなかなか言い出せない」と感じることがあります。

 「このようなことを言ったら、自分の人格に問題があると思われるのでは?」とか「自分は悪い人間なのでは?」と考えてしまうのです。 しかし、きょうだいとその兄弟姉妹の関係は、通常の兄弟姉妹の関係と同様それぞれ異なる事情を抱えた様々な形が存在するので、きょうだいが障害のある兄弟姉妹についてネガティブな気持ちを持ったとしても、それは少しもおかしいことでも悪いことでもありません。

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参考リンク
■「障害のある当事者からのメッセージ(知ってほしいこと)」の集計結果(内閣府HP)
https://www8.cao.go.jp/shougai/kou-kei/toujisha/siryo05.html
■【家族を看る10代】家族にネガティブな感情を抱いても自分を責めないで。ヤングケアラーの「きょうだい児」の本音(日本財団ジャーナル)
https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2022/81371/young-carers

6. 障害のある兄弟姉妹から、日常的に暴力や嫌がらせなどを受けるきょうだいがいる。

 きょうだいの中には、障害のある兄弟姉妹から暴力や嫌がらせを受ける者もいます。知的障害などの程度によっては、そのような行為について、「きょうだいが嫌だと思っている」こと、「やめるべき行動である」ことを伝えようとしても、健常者に伝わるのと同じようには伝わらないことがあります。 同じ家に住んでいるため、逃げることができませんし、親からは「身内なのだから我慢してくれ」と言われることも多く、そうなるとどうにもしようがありません。 このような単なる暴力や嫌がらせ以外にも、特に異性どうしのきょうだいの場合には、性的な問題行動に悩まされることも少なくありません。

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参考リンク
■自立相談支援機関相談窓口一覧(お金、仕事、住宅など、生活に関する相談窓口)(厚生労働省HP)
https://www.mhlw.go.jp/content/000614516.pdf
■DV相談プラス(内閣府)
https://soudanplus.jp/
■支援・相談先一覧
https://sibkoto.org/supports
■Sibkoto特集記事:知的障害の兄から性的虐待を受ける妹、ともに歩むべきか
https://sibkoto.org/articles/detail/14

7. 進路・結婚・出産を考えるうえで障壁となることがある。

 きょうだいは希望する進学や就職、結婚、出産などを、あきらめざるを得ないことがあります。 進学や就職については、親などから「今後も兄弟姉妹のケア役割を続けてほしい」という期待を受け、または自分でもそうすべきと考え、地元の学校や就職先を選ぶきょうだいが少なくありません。 職種も、兄弟姉妹のケアに役立つことから、またそれまでの経験からも、福祉職や教師を選ぶことがよくあります。幼い時から兄弟姉妹のケアをする福祉職の人達を見ているため自然と憧れたり、使命感を持って目指すことも多いようです。

 しかし、中には本当は別の仕事を希望していながら、「地元から遠い」という理由であきらめたり、「兄弟姉妹の介護に役立つように」という理由で福祉系の仕事を選ぶきょうだいもいます。 自分の希望どおりの仕事に就いた人も、自分が地元を離れる場合は、兄弟姉妹のケアができなくなること、親の負担が増えることに、罪悪感を感じることがあります。

  結婚については、結婚相手の負担を考えてはじめからあきらめたり、付き合っている人がいても結婚を断られてしまうきょうだいもいます。断られてしまう理由としては、生涯にわたる介護の負担に対する不安、遺伝の不安、それらを心配した相手の親の反対などがあります。
結婚したとしても、子どもへの遺伝に関する不安や、障害のある兄弟姉妹のケアの負担が重いことを理由に、出産するか、や第2子以降の出産について悩むきょうだいもいます。

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参考リンク
■Sibkoto特集記事:きょうだいの私結婚どうする?参加レポート
https://sibkoto.org/articles/detail/7
■Sibkoto特集記事:遺伝カウンセリングを知ろう
https://sibkoto.org/articles/detail/20

8. 「生涯にわたり、障害のある兄弟姉妹の面倒を見なければならない」というプレッシャーがある。

 親はいずれ子どもより先にいなくなります。一方、きょうだいは、障害のある兄弟姉妹と同じくらいまで生きる可能性が高いでしょう。そのため、きょうだいは「今親がやっていることを、将来自分が行えるだろうか」と想像し、不安に思い始めます。 障害のある兄弟姉妹のことを必死にケアしている親の様子を見ながら、それを将来の自分のこととしてとらえるのです。

 この「生涯、障害のある兄弟姉妹のケアをする義務」を遂行するために、きょうだいは自分の進学・結婚・就職・転職、その他の人生の重要な選択の都度、悩んだり、解決のため奔走したり、妥協したり、あきらめたりします。 実際、成長するにつれて、親とともにケア・介助を担うようになり、親が歳をとるにつれて、親の代わりとなって障害のある兄弟姉妹についてのケアを行うようになるきょうだいも少なくありません。

 また、障害の内容・程度によっては、行政サービスを使って生活全般のケアを任せることができる障害者の方もいる一方で、そのようなサービスの利用条件に当てはまらなかったり、何らかの事情で家族でケアが必要な方の生活を支えているケースもあります。その場合は、きょうだいの負担はさらに重くなります。

 さらには、障害の内容や状態によっては、家族に向けて攻撃的な行動・言動があることもあります。そのような場合は、ただ「ケアに要する時間・お金・体力面」だけの負担に終わらない大変さや辛さがあります。
(ケアの例)
・食事・トイレ・入浴・更衣・服薬などの生活介助。
・入居施設や利用サービスの選択・治療・通院など様々な手続きや意思決定。
・見守り、移動時の付き添い、パニックを起こした時の対応や予防、など。

以上のように、障害のある兄弟姉妹のケアは、きょうだいの人生においては重い課題です。

付き合い方のヒント
■障害福祉サービス等情報検索 (独立行政法人福祉医療機構WAM)
https://www.wam.go.jp/sfkohyoout/COP000100E0000.do
■自立相談支援機関相談窓口一覧(お金、仕事、住宅など、生活に関する相談窓口)(厚生労働省HP)
https://www.mhlw.go.jp/content/000614516.pdf
■Sibkoto特集記事:兄弟姉妹の扶養義務と成年後見制度を知る
https://sibkoto.org/articles/detail/8

最終更新日 2023年1月5日

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